商標登録出願の早期審査・早期審理の対象となる案件の拡大

2017年2月、特許庁より商標登録出願の早期審査・早期審理の対象となる案件を拡大するとの発表がなされました。
まず、そもそも早期審査・早期審理とは何か?ということをご説明します。
簡単に申しますと、文字通り、商標登録出願についての特許庁の審査を通常の商標登録出願よりも早めることです。
早期審査は、上述の通り、商標登録出願についての特許庁の審査を通常の商標登録出願よりも早めることです。
早期審理は、商標登録出願が特許庁の審査官による審査によって拒絶査定となった場合に、これを不服として特許庁の審判官の合議体に改めて当該商標の登録性について審理を求める拒絶査定不服審判手続において、通常の拒絶査定不服審判の審理よりも早く審理を行うことです。

本稿では、以下、早期審査についてご説明致します。
商標登録出願の審査は、通常、今の特許庁の審査のスピードですと、商標登録出願をしてから4~5ケ月ほどで登録査定や拒絶理由通知といった、特許庁の最初の審査の結果が通知されるのが一般的です。そのため、すんなり登録査定が来るケースでも商標の出願から登録まで約半年ほどかかるのが通常です。この審査の期間は、数年前の特許庁の商標の審査スピードから比べると飛躍的に早まったと感じておりますが、昨今の目まぐるしい経済環境でビジネスを展開されているクライアント様にとっては随分時間のかかるものという認識もあるようです。
事案によって早期の商標登録が必要なケースがあることは、特許庁の方でも理解しているようで、平成9年より商標登録出願についての早期審査・早期審理制度を設けていました。早期審査を利用した場合の審査期間は、一概には言えませんが、例えば2ケ月程度になることが考えられます。ただし、早期審査・早期審理の対象となる商標登録出願には制限があり、全ての商標登録出願が早期審査・早期審理の対象となる訳ではありませんでした。今回の対象拡大によっても全ての案件が早期審査・早期審理の対象となる訳ではありませんが、対象となる商標登録出願がかなり拡大され使いやすい制度となったと考えられます。

従来の早期審査の対象となる商標登録出願は、次の2つの類型がありました。
(ちなみに、所謂「新しいタイプの商標」(音商標、色彩のみの商標、位置商標、動き商標、ホログラム商標)は当面早期審査の対象となりません。)

1.「出願人又はライセンシーが、出願商標を指定商品・指定役務に既に使用している又は使用の準備を相当程度進めていて、かつ、権利化について緊急性を要する出願」

2.「出願人又はライセンシーが、出願商標を既に使用している商品・役務又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している出願」

上記1.の類型は「緊急性」の要件があったため、第三者が出願商標と同様の商標を使用している等、出願商標について第三者から警告を受けている、出願商標について第三者から使用許諾を求められている、出願商標について海外にも出願していることが必要でした。(ちなみに、今回の改訂で、緊急性の要件に、出願商標についてマドリッド協定議定書に基づく国際登録出願の基礎出願として国際登録の出願を行う場合も含まれることとなりました。)

上記2.の類型では、現に使用しているか、又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している必要がありました。つまり、2の類型では、使用しておらず、使用の準備もしていない商品・役務を指定している商標登録出願に関しては、認められておりませんでした。

今回の改訂で、次の類型の商標登録出願も早期審査等の対象となりました。

3.「出願人又はライセンシーが、出願商標を指定商品・指定役務に既に使用している又は使用の準備を相当程度進めていて、かつ、商標法施行規則別表や類似商品・役務審査基準等に掲載されている商品・役務のみを指定している出願」

3.の類型では、商標法施行規則別表や類似商品・役務審査基準等に掲載されている商品・役務のみを指定していれば、複数の商品・役務を指定した場合でも、いずれかの商品・役務について使用又は準備をしていれば足りることとなります。ですので、商標法施行規則別表や類似商品・役務審査基準等に掲載されていない新しい商品・サービスでない限り、かなり使いやすい類型と考えられます。

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