商標法第四条

商標法第四条は「商標登録を受けることができない商標」というタイトルがついております。

第一項

商標法第四条第一項には、19種類の商標登録を受けることができない商標が列記されています。
商標登録を受けるためには、商標法第三条の規定と、この商標法第四条第一項の規定をクリアする必要があります。
商標法第四条第一項の規定は以下の通りです。

「次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
一  国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗と同一又は類似の商標

二  パリ条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約をいう。以下同じ。)の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国の紋章その他の記章(パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国又は商標法条約の締約国の国旗を除く。)であつて、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標

三  国際連合その他の国際機関(ロにおいて「国際機関」という。)を表示する標章であつて経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標(次に掲げるものを除く。)
イ 自己の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似するものであつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

ロ 国際機関の略称を表示する標章と同一又は類似の標章からなる商標であつて、その国際機関と関係があるとの誤認を生ずるおそれがない商品又は役務について使用をするもの

四  赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律 (昭和二十二年法律第百五十九号)第一条 の標章若しくは名称又は武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律 (平成十六年法律第百十二号)第百五十八条第一項 の特殊標章と同一又は類似の商標

五  日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であつて、その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするもの

六  国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標

七  公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標

八  他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)

九  政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官の定める基準に適合するもの又は外国でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会の賞と同一又は類似の標章を有する商標(その賞を受けた者が商標の一部としてその標章の使用をするものを除く。)

十  他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十一  当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて、その商標登録に係る指定商品若しくは指定役務(第六条第一項(第六十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定により指定した商品又は役務をいう。以下同じ。)又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十二  他人の登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をするもの

十三  削除

十四  種苗法 (平成十年法律第八十三号)第十八条第一項 の規定による品種登録を受けた品種の名称と同一又は類似の商標であつて、その品種の種苗又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするもの

十五  他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)

十六  商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標

十七  日本国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地のうち特許庁長官が指定するものを表示する標章又は世界貿易機関の加盟国のぶどう酒若しくは蒸留酒の産地を表示する標章のうち当該加盟国において当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒若しくは蒸留酒について使用をすることが禁止されているものを有する商標であつて、当該産地以外の地域を産地とするぶどう酒又は蒸留酒について使用をするもの

十八  商品等(商品若しくは商品の包装又は役務をいう。第二十六条第一項第五号において同じ。)が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標

十九  他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)

商標法第四条第一項各号の中でも、商標登録出願に対して発せられる「拒絶理由通知書」で、登録できない理由として挙げられることが比較的多いのが第十一号の規定です。
商標法第四条第十一号は、他人の先に出願された商標と同一又は類似で、かつ指定商品・指定役務も同一又は類似の場合です。
この拒絶理由通知書は、特許庁が、出願された商標と、他人の登録商標とが「類似」と判断したことになりますので、その出願した商標を使用するのは危険であることを意味します。拒絶理由通知書に対して意見書を提出して反論し、商標登録することを目指しつつ、商標登録されなかった場合を想定して商標の使用を見合わせることも検討すべきです。

第二項

商標法第四条第二項は、商標法第四条第一項第六号の規定の例外を定めています。
商標法第四条第二項の規定は以下の通りです。

「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利をを目的としないものを行っている者が前項第六号の商標について商標登録出願をするときは、同号の規定は、適用しない。」

商標法第四条第六号は「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利をを目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」は、商標登録を受けることができない、という規定です。
原則として、商標法第四条第一項第六号に該当する商標は、商標登録を受けることができませんが、例外的に、国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利をを目的としないものを行っている者自身は商標登録を受けることができるという、当然といえば当然ともいえることを確認的に定めているのが商標法第四条第二項といえます。

第三項

商標法第四条第三項は、商標法第四条第一項各号に定められた、「商標登録を受けることができない商標」について、一部の例外を定めている規定です。
商標法第四条第三項の具体的な条文は以下の通りです。

「第一項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。」

この商標法第四条第三項は、商標法第四条第一項に規定された「商標登録を受けることができない商標」に該当するか否かの判断は、商標登録査定や拒絶査定をする時に判断することを前提としています。そのうえで、商標法第四条第三項に掲げられた、第八号、第十号、第十五号、第十七号及び第十九号に関しては、査定の時にこれらの規定に該当する商標であっても、商標登録出願の時にこれらの規定に該当していなければ、これらの規定は適用しないこととしています。
これは、商標登録出願の時に、これらの規定に該当しなかった商標が、商標登録出願の後に、これらの規定に該当するようになって商標登録を受けることができないとするのは酷だからとされています。
ちなみに、商標法第四条第一項第八号は「他人の氏名等を含む商標」、第十号は「他人の周知未登録の商標に類似する商標」、第十五号は「他人の商品・役務と混同を生ずるおそれのある商標」、第十七号は「ぶどう酒等の産地を表示する商標」、第十九号は「他人の周知商標と類似で、不正目的で使用する商標」です。